2008年1月6日

わが懐旧的探偵作家論

山村正夫『わが懐旧的探偵作家論』(日本推理作家協会賞受賞作全集32, 双葉文庫)読了。1975年『幻影城』創刊にあたり島崎博編集長の要請で連載されたもの。著者はあの『湯殿山麓呪い村』の作者、なのだが実は題名しか知らない。

採り上げられてる作家は以下の20名。○は読んだことのない作家、◎は本書で初めて名前を知った作家。(大坪砂男は新青年傑作選みたいなやつで1作くらいはあったかも)

  • 朝山蜻一 (◎)
  • 鮎川哲也
  • 江戸川乱歩
  • 大河内常平 (◎)
  • 岡田鯱彦
  • 大坪砂男 (○)
  • 香住春吾 (◎)
  • 香山滋
  • 狩久
  • 木々高太郎
  • 楠田匡介 (○)
  • 島田一男
  • 城昌幸
  • 高木彬光
  • 千代有三 (◎)
  • 角田喜久雄
  • 日影丈吉
  • 氷川瓏 (○)
  • 山田風太郎
  • 横溝正史

氷川瓏は乱歩の『十字路』の協作者・渡辺剣次の実兄だそうな。

陸橋殺人事件

実家にて『陸橋殺人事件』読了。解説によればノックス自身は途中でカトリックに改宗しているらしい。

「赤い血が流れていない人間には殺人はできない」という理屈は「冷血な殺人鬼」みたいな決まり文句とは正反対で面白い。殺人というのはきわめて人間的な行為もしくは現象だということなのかもしれない。

2008年1月4日

あんぐろ~

昔読んだ(が、すっかり内容は忘れている)ロナルド・A・ノックス『陸橋殺人事件』(創元推理文庫)再読中。

皮肉の応酬が楽しい。英国古典ミステリというのはかの国における「サザエさん」のようなものなのではないかと思う。ロバート・L・フィッシュの殺人同盟の3人を思い出す。

2008年1月3日

2007年収穫

一番は武田泰淳『富士』なんだけど、それに次いで印象深かったのがD・W・バッファ『遺産』(文春文庫)。弁護士ジョーゼフ・アントネッリが主人公のシリーズ第4作。

出てすぐ買ったはいいが長らく積ん読状態で、しかも途中で一度読み出しかけて挫折している。たぶん最初のほうの法律事務所の面々や実業家夫妻なんかの晩餐シーンが当時は退屈に思えたせいかも。が、去年やっと本腰を入れて読んでみたらこれが面白い。

このシリーズは有能な弁護士であるアントネッリが法廷では勝利をおさめるものの、毎回のように何かしら心に深傷を負うような展開が待ちかまえていて思わず「何もそこまでせんでも」とつぶやきたくなるような理不尽さが特徴だったりするのだが。

今回もやってくれるというか。

法廷シーンの大詰めでは「ぐはっ、そう来たか」と最初のけぞり、そしてすぐ「しかしそこまでやるか。この先どうすんだよ……」と鬱に沈みこんでしまった。

巻末解説でも「人生派」などと呼ばれているように、視点人物でもあるアントネッリは法廷以外の場ではさほど饒舌ではなく、どちらかといえば内省的なタイプ。サンフランシスコの町を眺めながら幼いころに祖父から聞かされた逸話を思い出すあたりなど、なんとなく村上春樹の小説(といっても最近のはどんなか知らないけど)のような雰囲気も漂う。

が、この作品では一皮むけたというか、どんでん返しと伏線がビシッと効いていてエンタテインメントとしても申し分ない。日本は大統領制じゃないから設定にちょっと難があるけど、もし田宮二郎とか岡田真澄とか岸田森といった面々が生きてたらドラマか映画になったのも観てみたいもんだがなぁと思った。

2008年1月2日

2008年最初の小説

レックス・スタウト『手袋の中の手』(ハヤカワ・ミステリ)を読みはじめる。

女嫌い(ただし接し方は慇懃無礼)の美食家探偵ネロ・ウルフは登場しないが、こちらの女探偵ドル(シオドリンダ)・ボナーもいきなり「わたし、男は嫌い」(p.25)ときたもんだ。

アーチーのおどけた一人称じゃないので少々とっつきにくくはあるものの、冒頭からいかにも怪しげな人物は出てくるし飽きることはなさそう。

2008年1月1日

2007年最後に読んだ小説

大下宇陀児『金色藻』(春陽文庫)。人殺しすぎ。