2007年11月30日

図書館で読んだ小説

遠藤周作「戦中派」(『遠藤周作文学全集 第8巻 短篇小説III』所収)
出征する友人から別れ際に渡されたバイオリン独奏会のチケット。そのコンサートの前夜に東京はB29による大空襲に見舞われる。
遠藤周作「学生」(『遠藤周作文学全集 第8巻 短篇小説III』所収)
『短篇小説I』所収のほうはフランスの抗独組織の労働者が新入りの学生に嫌悪感を抱く話。こちらは戦後まもなくカトリック神父の尽力で日本からフランスに渡った留学生たちとかつて九州からポルトガルに渡った天正遣欧少年使節をパラレルに描いた作品。
遠藤周作「アデンまで」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
現地の女に愛されながらも一緒になる気にはどうしてもなれず、逃げるようにフランスを発つ日本人青年。船は酷暑の中をアフリカ大陸に沿って進み、同じ四等船室(=積荷用の船倉)には黒人の女が病に臥している。青年が日本に帰るのかどうかは不明。
遠藤周作「白い人」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
同巻所収の「学生」と同じく第二次大戦でのドイツ占領下のフランスが舞台。萩尾望都『トーマの心臓』のユリスモールの暗い回想シーンを思い出しつつ読む。ただしこの小説の主人公は『トーマの心臓』でいうと退学させられる上級生のほうにあたる。
遠藤周作「黄色い人」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
第二次大戦末期、肺を患って郷里の町に帰ってきている青年。徴兵されていった友人の恋人と毎週のように寝ている。この町に住む二人の西洋人(牧師とその前任者)を通して「白い人」での善と悪の対立を再現しつつ、そこにこの日本人青年を介在させることによりテーマを深化させている。
遠藤周作「パロディ」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
妻の良妻賢母ぶりに言いようのない不満をおぼえていく男の手記。
遠藤周作「夏の光」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
植民地満州の日本人住宅地で井戸水による中毒事件が頻発。ジャンルもテーマも全然ちがうが、ヒラリー・ウォーの『この町の誰かが』を思い出したりした。動揺するコミュニティの姿が医者の息子である少年の目を通して描かれ、少年の家で交わされる関西弁や無邪気な幼い妹の存在などが却って残酷さを際立たせている。
久生十蘭「心理の谷」(鈴木貞美編『モダンガールの誘惑』平凡社)
唐突に久生十蘭。高所恐怖症の男が大陸生まれの闊達な娘に翻弄される話。最後の展開がちょっと安っぽいラブロマンスみたいで不満。

2007年11月29日

昼夜を徹して

ホテルの部屋に帰ると普段の反動からかテレビのニュースばかり見ている。額賀財務大臣が報道陣に対し「昼夜を徹して調べたが(贈賄容疑の渦中にある商社役員との会食に同席したという)記録はなかった」と答えていたのを見て違和感をいだいたのは私ばかりではあるまい。

まあ、自分のこととはいえ何年も前の話だ。そんなことは憶えてない。そこで書類をひっかきまわしてみたり人にも問い合わせてみたりした。その結果、同席の記録は残っていないことがわかった。それでもあんたたち疑うのか。そう言いたいのはわかる。

どうだ参ったか。八方手を尽くして調べたんだ、おまえらありがたいと思え。返す刀でそんなニュアンスも漂ってくる。

でもやっぱり「昼夜を徹して」というのは大袈裟というか、どうにも文脈にそぐわない。

そんな折、携行していた武田泰淳『滅亡について』(岩波文庫)に実にしっくりくる一節があった。第二次世界大戦後に出版された「日本の将兵が戦犯として収容所に入れられてから、心を改めて書いた告白の手記を集めた」書物の読後感を、彼は次のように書いている。(p.65-66)

はたしてこれが、心を改めた人の、いつわらない真情であろうかと迷った。これらの手記はいずれも口をそろえて、同じようなドギツイ単語、きまりきった形容詞で、自分たちの配属された日本軍の残虐性をののしっている。ののしること自体が悪いとはいわない。ただし、早いところ、できるだけ極端な言葉を使って、軍や自分のかつての醜い行為をののしることを競いあうことによって、現在の自分の反省ぶり、改心ぶりを認めてもらおうとする、あせり、性急さが多くの手記にあった。しみじみと罪を認めたというよりは、罪を認めたと他人に認めさせたい、欲望のほうが先にちらついていた。一日も早く釈放されたいため、何がなんでもハッキリした改心の証拠を見せようとして、知っているだけの(個性のない、肌のぬくみのない)残虐用語を、かき集め、吐きだそうとした。その心情に同情しないわけではない。しかしこれらの文章には、どこか、まるで自分とは関係のないひとごとをぶちまけるような、よそよそしさがつきまとっているように思われた。出征兵士をおくりだすさいの在郷軍人幹部の、あの聞くまえから内容のわかってしまうきまり文句を、ただ裏返しにしたにすぎない文章もあった。罪の事実を、よくよくたどって、めいめいに、心しずかに、違った口調で物語るほうが人の心を打つ。「これなら大丈夫」という色彩をぬりたくり、音調にあわせて、いっせいに喋りだすのでは、なんとなくさびしい気持がする。

もっとも額賀大臣の場合、現時点では何か具体的な罪に問われているわけではなく疑惑の対象となっているにすぎないわけだが、それだけになおさら「昼夜を徹して」という「極端な言葉」が「ひとごとをぶちまけるような」「よそよそしさ」を醸し出しているのだと思う。何かこう、罪に問われる前からすでに釈明の言葉が口をついて出てきてしまったのではないか、そんな感じがする。

2007年11月23日

休館

今日も寒い。昼休みは図書館だ。と思ったら休館日だった。うーむ。

今週はコーネル・ウールリッチ「診察室の罠」と遠藤周作「学生」「シラノ・ド・ベルジュラック」を読む。「診察室の罠」は白亜書房の『コーネル・ウールリッチ傑作短篇集(1) 砂糖とダイヤモンド』冒頭の作品。遠藤周作は新潮社の全集の『短篇小説I』に収録のもの。

2007年11月19日

そうだ図書館だ

出張中の荷物はバッグにギリギリまで詰めこんでるので帰りに本が増えるのは悩ましいなとブツクサ書いたが、よく考えたら出張先のビルのすぐ近くに図書館があって先週木曜もそこで昼休みに小川国夫全集で久々に「リラの頃、カサブランカへ」を読んだのだった。

これからは日中でも冷えこんでくるだろうし、よっぽど好天じゃなければ図書館に通うというのもストイックでいいな。

2007年11月17日

帰りの本

古本屋とかでではなく買った新潮文庫のページからは、あの懐かしい匂いがする。

月曜に持って出た文庫本はちょうど木曜の夜あたりには読み終わってしまい、荷物は増えるが帰途につく金曜には何かしら買い足すことになる。

先週は丸山健二『生きるなんて』朝日文庫。辛口というより「戦争なんて」の章などはえらくストレートだなと思った。

そして今週が安部公房『砂の女』新潮文庫、税込500円。新潮は角川や講談社なんかとちがって古い作品でも普通の本屋でけっこう簡単に手に入るのがいいな。

これは人それぞれだろうけど、新潮文庫の匂いは俺の場合は星新一を思い出させる。

2007年10月28日

佐々木丸美『崖の館』

何かのついでに『水に描かれた館』『夢館』は講談社文庫の古本で買ってあったのだが三部作最初の本書だけ持ってなかったので創元推理文庫から出たやつを買ってきて読み中。

天然なのか計算ずくなのかどうにもわからず気持ち悪い。けれども何か魔力のようなものがあって読ませる。語り手の涼子には『綿の国星』のチビ猫を連想。今は中盤の日記のあたり。このへんはむしろ『トーマの心臓』を思わせる。173ページはちょっとすごいなと思う。

2007年10月1日

富士

明け方に武田泰淳『富士』(中公文庫)読了。まいった。この十年ほど一番好きな小説は山田風太郎『魔群の通過』(文春文庫)だったが入れ替わった。

振り返ってみると読みはじめたのは8月の下旬あたりらしい。そのころ観た芝居の感想などは明らかにこの小説の影響を受けている。

2007年8月23日

あぅ

今気がついたけど服部まゆみさんの訃報に喪主として名前が挙がってる夫の正さんってこないだ読んでた『鮎川哲也と十三の謎'90』に「栄光の薔薇」を書いてるひとと同一人物なのかな。執筆者紹介によれば歯学博士とのことだが。

というかそもそもこの執筆者紹介ページって名前の五十音順になってて段はまたいでるけど服部さんが二人ならんで載ってるんだから、これ読んだ時点で気づいててもよさそうなもんだな。

2007年8月22日

おくやみ

asahi.comなどに服部まゆみさんの訃報。8/16、58歳、肺癌。愛煙家だったのかな。

最近の作品は読んでないけど、読んだ中では『ハムレット狂詩曲』が断トツに好き。その次が『黒猫遁走曲』だな。あのなんとも不思議な読後感はたまらなかった。このひとはいい歳のとりかたをしてるんだろうなと思ったものなのに……

2007年7月29日

鮎川哲也と十三の謎'90ようやく読了

山口雅也「「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件」
キッド・ピストルズもの。もしかしたら過去に短編集で読んでるのかもしれないけど、読んでたとしてもすっかり忘れてるので初読状態。パラレル英国についての説明のあたりは抜群におもしろい。ミステリの部分は悪くはないんだけど早くも記憶から薄れつつある。なんでだろうな。書き方が理路整然としすぎてるんじゃないかな。そのせいで、発想はけっこうダイナミックなわりにセンス・オブ・ワンダーとかカタルシスが少ない。もうちょっとメリハリがあるといいいと思う。
日影丈吉「壁の男」
本書に創作を寄せているミステリ・プロパーの作家としては唯一のベテラン。タイトルのせいではないけど安部公房っぽくって好きだ。
依井貴裕「緑の密室」
終盤になって「読者への挑戦」が挿入されているのを見て「あ、パズラーだったのね」と初めて気づいたのだが、それにしても登場人物の言動が不自然すぎ。薄っぺらいのに長い。読むのが苦痛だった。
小山正「ミステリ珍宝館へようこそ」
ミステリにまつわるCDやビデオのコレクション自慢。
岩崎正吾「横溝正史と松本清張における「本格派」と「社会派」ということ」
単純な二元論に堕することなく両者の共通点と固有性を摘出する真摯な論考。
戸松淳矩「キング・チャールズの告発」
うーん、微妙。もうひとひねりないときついのでは。
今邑彩「時鐘館の殺人」
我孫子武丸の初期作品を思わせるようなおちゃらけに鼻白む部分が多くてあまり期待はしていなかったのだが、二度三度と楽しめる作りになっていてそこそこ満足。ただし部屋番号のローマ数字について誤植なのか叙述トリックなのか判断に迷う箇所がある。

2007年7月28日

鮎謎90・その3

澤木喬「鳴神」
よく考えたら雰囲気が一番近いのは安部公房だった。終盤まではとにかく読みごたえがある。が、最後にミステリ的な決着をつけようとするところで印象がぼやける。伏線も張りめぐらされてるしネガとポジが反転する気持ちよさも用意されているのだが、どうも据わりが悪くてインパクトが弱い。『いざ言問わむ~』が記憶に残ってないのも同じような原因なのかな。でもこの手の作風であれば今後も読んでみたいものだ。
山崎純「Prize for patience(忍耐賞)」
よくある「すべからく」の誤用を除けば可もなく不可もなし。
黒崎緑「幽霊騒動」
漫才シリーズの第1作らしい。今回初めて読んでみたけど悪くはなさそう。
種村直樹「トリックに使えるかと思ったが」
創作こぼれ話、みたいな感じのコラム。
白峰良介「錯覚コレクション」
同上。
笠原卓「草鞋履きのノウハウ」
同上。ちょっと話題がおっさんくさい。
北村薫「白い朝」
もうすぐ孫が生まれる奥さんがお茶の時間かなんかに旦那に語りかける口調の短編。なので「私」シリーズよりは読みやすい。まぁ最初のうちだけだけど。
小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」創作メモ
原稿用紙にびっしり書かれたメモ。それを7ページにわたってカラー写真で紹介。丁寧ではないけど几帳面な字。
鮎川哲也「子育てに『黒死館』創作の秘密を見た」
「幻の探偵作家を求めて・番外編」第一回、小栗虫太郎の巻。鮎川氏と戸川編集長が虫太郎の三男・宣治氏を訪ねてインタビュー。
葉月つかさ・木智みはる・暮羽けい「薔薇、黒死館、そして虚無 ミステリ界の金字塔に挑戦する身の程知らずの方言座談会」
なんか2時間ドラマのようなタイトルだが、思えばこの1990年というのは東京創元社から『薔薇の名前』が翻訳出版された年なのだった。懐かしい。木智みはるが現在の若竹七海。
服部正「栄光の薔薇」
同じく『薔薇の名前』を論じたエッセイ。今気がついたけどタイトル単なる駄洒落じゃん。

これで半分ちょっとすぎ。

2007年7月23日

鮎哲十三90・その2

「猫の手」は結末もなかなかよかった。つづきを安直に箇条書き。

紀田順一郎「展覧会の客」
例によって例のごとく古書蒐集家の話。
仲英宏「「直木賞」への訣別」
ミステリの読まれ方についての問題提起ないし提言らしいのだが論点が散漫でよくわからない。
河田陸村「世代交代の始まったミステリー界」
「SRの会」が選ぶ年間ベスト10の直近10年間の推移を分析した論考。分析結果のひとつとして「大手出版社の出す文庫・ノベルスは読者から見放されつつある」→「これは粗製濫造によるところが大きい」というものがあり、最後は
 ――とここまで書いたら、陰の声が教えてくれた。「東京創元社も国内ミステリーを文庫で出すらしいぞ」と。
 えー、それ本当? でも、○○文庫や××ノベルズみたいな本は、まさか出さないでしょうね、東京創元社さん。
と締めくくられている。まるで17年後の今日を予見していたかのような言葉だと思う。

逢坂剛「ミステリーと映画の話」
新潮文庫の100冊っていうか……

有栖川有栖「登竜門が多すぎる」
駄洒落はおもしろいんだけど最後のひねりがあまりよく効いてない。
澤木喬「鳴神」
今これ読み中。昔読んだ『いざ言問わむ都鳥』はほとんど印象に残ってなかったりするんだけど、これは素晴らしい。この一作だけでもこの本買った甲斐があった。まるで小川国夫か丸山健二の小説を読んでるかのようである。ミステリとしてどうなのかはまだ未知数。残りが楽しみ。

2007年7月22日

鮎川哲也と十三の謎

ずっと昔に買ったままだった『鮎川哲也と十三の謎'90』(東京創元社)を読み中。

折原一「横溝正史の旅」
「本陣」「八つ墓村」「獄門島」の舞台をめぐる紀行文。
宮部みゆき「心とろかすような」
警察犬を引退して探偵事務所に飼われている老犬の一人称、おもしろいのは「俺」が近所の犬を相手に聞き込みにまわるハードボイルド風のシーンくらいで、その他は比喩や文体がことごとく鼻についてしまう。
辻真先「WHO ARE YOU?」
後年のフーダニット『真理試験』を思わせるような作品。
服部まゆみ「猫の手」
エクストレム『誕生パーティの17人』は90歳だったがこちらはなんと101歳のお婆さんの誕生日。今これ読んでるとこ。ほどよいブラックユーモアが上品で好印象。

ヨットクラブ

デイヴィッド・イーリイ『ヨットクラブ』(晶文社)を7/18に読了。これはすごい。作風は筒井康隆とか小林恭二みたいな感じ。表題作や「面接」あたりの作品には、サルトルの「ある指導者の幼年時代」とかつかこうへいの諸作に通じるテーマが垣間見える。「面接」は小劇場の二人芝居で観てみたい気がした。

2007年7月17日

誕生パーティの17人

創元推理文庫1987年。スウェーデンの作家ヤーン・エクストレムによる1975年の作品。

久々に読む本格物。たいそう面白かった。父親が死んだ翌日とかに娘たち(20代)が庭でバドミントンなんかするかなぁ(笑)といった疑問はあるが、かといって本格ミステリにありがちな「人間が描けてない」というほどではない。トリックがお洒落というかキュートで気に入ってしまった。

この人の作品は他には邦訳されてないようで残念。解説によると本訳書の刊行の過程もかなりたいへんだったようなので、そのせいでもあるんだろうか。

2007年7月15日

そして吉田秋生

amazonで『観用少女』を買ったらおすすめ商品に吉田秋生『海街diary 1 蝉時雨のやむ頃』というのが出てきた。説明によると「新境地に挑む」云々、レビューによれば「20年前の秋生さんに戻ったような」「情緒系」とあり、これは読まねばという気になりつつある。

それにしても吉田秋生というとなんとなく中央線沿線というイメージがあったんで、舞台が鎌倉というのがちょっと意外。

2007年7月14日

観用少女

昨日amazon.co.jpから川原由美子『観用少女』全2巻が到着。上巻一気読み。思い入れありすぎで書くと終わらなくなりそうだし、amazon.co.jpの書名もグダグダなんで、とりあえずデータ部分のみ記録しておく。

書名 発行日
上巻 『観用少女 -明珠-』(プランツ・ドール -めいじゅ-) 2006年12月30日
下巻 『観用少女 -夜香-』(プランツ・ドール -やこう-) 2007年 2月28日

上巻下巻というのは奥付の発行日や帯の惹句をもとにそう呼んでるだけで、本体にはどちらが上巻だとか第1巻だとかは特に記載されてない。

タイトル 初出 ソノラマコミック文庫
明珠 1 食卓のミルク '92年「眠れぬ夜の奇妙な話」VOL.10 『観用少女 1』 第1話
2 スノウホワイト '94年「眠れぬ夜の奇妙な話」VOL.18 『観用少女 1』 第3話 *1
3 空中庭園 '95年「ネムキ」VOL.23 『観用少女 1』 第7話
4 宝石姫 '95年「ネムキ」VOL.25 『観用少女 1』 第9話
5 天使の役作り '95年「ネムキ」VOL.26 『観用少女 1』 第10話
6 桃源郷 '95年「ネムキ」VOL.28 『観用少女 2』 第1話
7 サークル '96年「ネムキ」VOL.29 『観用少女 2』 第2話
8 蜜月 '96年「ネムキ」VOL.30 『観用少女 2』 第3話
9 空をとぶ夢 '96年「ネムキ」5月号 『観用少女 2』 第4話
10 '96年「ネムキ」9月号 『観用少女 2』 第6話
11 流砂 '96年「ネムキ」11月号 『観用少女 2』 第7話
12 "プレゼント" '98年「ネムキ」5月号
13 珊瑚 '98年「ネムキ」9月号 『観用少女 2』 第8話
14 オーロラ姫 '97年「ネムキ」3月号
15 ユメデアウマナザシ '99年「ネムキ」7月号
夜香 1 ポプリ・ドール '93年「眠れぬ夜の奇妙な話」VOL.16 『観用少女 1』 第2話
2 RAINY MOON '94年「ネムキ」VOL.20 『観用少女 1』 第4話 *2
3 ラッキードール '94年「ネムキ」VOL.21 『観用少女 1』 第5話
4 ブルードール '94年「ネムキ」VOL.22 『観用少女 1』 第6話
5 ミッシング・ドール '95年「ネムキ」VOL.24 『観用少女 1』 第8話
6 楽園の果実 '95年「ネムキ」VOL.27 『観用少女 1』 第11話
7 翠玉 '96年「ネムキ」7月号 『観用少女 2』 第5話
8 ムーンライト・シャドウ '97年「ネムキ」1月号
9 神様の盃 '97年「ネムキ」5月号
10 メランコリィの花冠 '98年「ネムキ」11月号
~'99年「ネムキ」1月号
『観用少女 2』 第9話 *3
11 夜来香 '99年「ネムキ」3月号
12 御喋りな墓標 '99年「ネムキ」9月号
~'00年「ネムキ」11月号
*4
13 冬の宮殿 '01年「ネムキ」1月号
+改稿分描き下ろし
*1
「スノウホワイト」はPart1とPart2に分かれていて、それぞれ別の話。しかしその構成は実に見事。
*2
文庫版目次での表記は「レイニイ・ムーン」
*3
文庫版では「'98年「ネムキ」11月号'99年「ネムキ」1月号」と記載されてるので前後編の分載と思われる。「ネムキ」が隔月刊なのかどうかとか、そのへんのことは実は知らない(笑)
*4
こっちは文庫版未収録なので細かい掲載号は不明。

2007年7月9日

完全(!?)殺人事件

クリストファ・ブッシュ『完全殺人事件』読了。なんだこりゃ。

理詰めではなく勘と地道な捜査で犯人を突きとめるというのは、まぁそれはそれでかまわない。しかし、トリックを見破るきっかけが地道な捜査の結果でもなんでもなく、都合よく配置されたまったくの偶然からでしかないことに唖然としてしまう。

2007年6月22日

たいへんだ

朝日ソノラマが累積債務16億円で今年9月末に解散というニュースを見て川原先生の『観用少女』が今どうなってるのかamazon.co.jpで検索してみた。

文庫版は相変わらず第2巻までしか見当たらない。ところがなんと

というのが正月の前後に出ていたらしい。「完全版」「愛蔵版」と表記がバラバラだが、この2冊で上下巻になってるようだ。くー、知らなかったよ。買います買います。もちろん新品でかまいません。

2007年6月14日

鮎川だめだ(笑)

いやー「地虫」はよかった。

続く表題作「楡の木荘の殺人」はいかにも鮎川作品なのだがタイトルからもわかるように普通のミステリで無味乾燥というかなんというか正直な話つまらん。

2007年6月12日

鮎川見直した

昨日から河出文庫の鮎川哲也初期コレクション1『楡の木荘の殺人』を読み始めたところ。

まだ途中だけど「地虫」に驚く。本格とかミステリとか問題外。ファンタジー、と言ってしまえばそれまでなんだが正直言って『黒いトランク』や『りら荘事件』なんかよりずっと面白い。

これは神林長平『言壺』の「栽培文」を読んで以来の感動だな。

文章にも気迫というか若さが感じられる。このひとは純粋に小説とか物語が好きだったんだろうなと思う。

文学寄りと言われる土屋隆夫の初期作がそれでもミステリ的要素を多分にもってるのに比べて本格の鬼と言われる鮎川のものが逆に全然ミステリじゃないというのも興味深い。

2007年5月27日

躊躇

石持浅海『水の迷宮』が文庫化されたけど『月の扉』ですっかり幻滅してしまったのでオイソレとは手がでない。

2007年5月14日

天藤真『死角に消えた殺人者』

うーん、なんか安っぽくないか?

視点人物であるヒロインは真面目なOLという設定なんだけど。母を殺されて犯人への復讐を一人胸の中で誓っていたかと思えば、その数日後には峰不二子化して妙に尻軽な行動をとっていたり。

巻末解説などからは経緯がわからないのだが週刊誌とか夕刊紙に連載された作品のような印象を受ける。土曜ワイド劇場のコメディタッチのやつっていうか。むろんリアリティなどは二の次なんだろうけど、それにしても御都合主義がすぎるような気がしてしかたなかった。

ヒロインの言動の不自然さ。最後まで読んでみると、それはこの作品を独自のミステリたらしめるためのやむをえざる要素だったらしいことにはいちおう納得できなくもない。

この路線を発展させていったところに、つまり不自然なのをいかに不自然でなく見せるかに意を凝らしていくと、たとえば山田正紀あたりの作風になるのかもしれないなと思う。

2007年5月4日

探偵術 教えます

『死を招く航海』は最後が尻すぼみでちょっとガックリ。続いてパーシヴァル・ワイルド『探偵術 教えます』読み中。探偵になるための通信教育学校の主任警部とオマヌケな生徒の往復書簡(ときどき電報)からなる連作短篇集。あんまり期待してなかったけどこれは面白い。思うに邦題でいくぶん損してるんじゃないかと思う。

2007年4月22日

新聞紙って

パトリック・クェンティン『死を招く航海』読み中。客船で旅行中のヒロインが友達になったおじさんと夜に予定されている仮装ダンスパーティを控えての会話
おじさん「ところで、あなたは何の仮装をするんです?」
ヒロイン「新聞紙に扮するつもりなので、風が出なければいいんですけど」
これがどうにも可笑しい。

2007年3月25日

『魚服記』殺人事件

目森一喜、天山出版1992年。

なんかライトノベルっぽい会話といい文章は素人くさいのだが、以下の一節(p.322)はなかなかよかった。ここだけ詩人か誰かの書いたものを借用してきたみたいな感じ。

 彼らにとっては、せせこましい人間関係そのものが政治だった。そして、型にはまった活動を、政治的であるための保証として行うために出かけて行く。
 どこに行った。誰と会った。誰を知っている――それが政治であり、のんべんだらりとそんな政治を繰り返すうちに、向こうからやって来るのが革命だった。

2007年3月5日

城昌幸

ちくま文庫の城昌幸集を読み中。「不可知論」「中有の世界」といったあたりは後の星新一の「処刑」「殉教」を思わせるものがある。

2007年3月3日

メモ

レックス・スタウト『マクベス夫人症の男』(ハヤカワ・ミステリ文庫)読了。この動機の伏せ方は好きだな。

名古屋駅のKioskで東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』(講談社文庫)購入。

2007年2月20日

マチルドはクララか

ようやく『長い日曜日』読了。思ったより面白かった。面白いっていうのはエンタテインメントとしての意味じゃなくて、そこここで思いを馳せさせられるというか。馳せさせられる? なんか変だな。

ここはひとつ『ロング・エンゲージメント』観てみようかなとも思う。そこでふとカバー折り返し部分にスチール写真がいくつか載っているのに気づいた。なんかマチルドらしき人物がまっすぐ立っている…

うーむ。

2007年2月8日

長い日曜日

セバスチアン・ジャプリゾ『長い日曜日』読み中。左とん平の「ヘイ・ユウ・ブルース」みたいな箇所があって笑った。