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図書館で読んだ小説
- 遠藤周作「戦中派」(『遠藤周作文学全集 第8巻 短篇小説III』所収)
- 出征する友人から別れ際に渡されたバイオリン独奏会のチケット。そのコンサートの前夜に東京はB29による大空襲に見舞われる。
- 遠藤周作「学生」(『遠藤周作文学全集 第8巻 短篇小説III』所収)
- 『短篇小説I』所収のほうはフランスの抗独組織の労働者が新入りの学生に嫌悪感を抱く話。こちらは戦後まもなくカトリック神父の尽力で日本からフランスに渡った留学生たちとかつて九州からポルトガルに渡った天正遣欧少年使節をパラレルに描いた作品。
- 遠藤周作「アデンまで」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
- 現地の女に愛されながらも一緒になる気にはどうしてもなれず、逃げるようにフランスを発つ日本人青年。船は酷暑の中をアフリカ大陸に沿って進み、同じ四等船室(=積荷用の船倉)には黒人の女が病に臥している。青年が日本に帰るのかどうかは不明。
- 遠藤周作「白い人」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
- 同巻所収の「学生」と同じく第二次大戦でのドイツ占領下のフランスが舞台。萩尾望都『トーマの心臓』のユリスモールの暗い回想シーンを思い出しつつ読む。ただしこの小説の主人公は『トーマの心臓』でいうと退学させられる上級生のほうにあたる。
- 遠藤周作「黄色い人」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
- 第二次大戦末期、肺を患って郷里の町に帰ってきている青年。徴兵されていった友人の恋人と毎週のように寝ている。この町に住む二人の西洋人(牧師とその前任者)を通して「白い人」での善と悪の対立を再現しつつ、そこにこの日本人青年を介在させることによりテーマを深化させている。
- 遠藤周作「パロディ」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
- 妻の良妻賢母ぶりに言いようのない不満をおぼえていく男の手記。
- 遠藤周作「夏の光」(『遠藤周作文学全集 第6巻 短篇小説I』所収)
- 植民地満州の日本人住宅地で井戸水による中毒事件が頻発。ジャンルもテーマも全然ちがうが、ヒラリー・ウォーの『この町の誰かが』を思い出したりした。動揺するコミュニティの姿が医者の息子である少年の目を通して描かれ、少年の家で交わされる関西弁や無邪気な幼い妹の存在などが却って残酷さを際立たせている。
- 久生十蘭「心理の谷」(鈴木貞美編『モダンガールの誘惑』平凡社)
- 唐突に久生十蘭。高所恐怖症の男が大陸生まれの闊達な娘に翻弄される話。最後の展開がちょっと安っぽいラブロマンスみたいで不満。