2006年4月10日

ロバート・L・フィッシュ『シュロック・ホームズの回想』

ロバート・L・フィッシュ『シュロック・ホームズの回想』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読了。オチがよくわからないものがいくつかあったりもするが、それを度外視しても『冒険』に比べてかなりインパクトが弱い。

ちまちました暗号解読ものが少なからぬ比重を占めているせいもあるのだろうか。シュロックによる誤読がそのままオチだと物足りない。誤解や誤読にもとづきあらぬ方へ突っ走っていってこそ爆笑を誘うのだと思うのだが。

あと『冒険』では複数人による訳だったが、この『回想』ではすべて深町さん訳になっている。訳者が専任になると如何せんルーチンワークになりがちである。木村二郎氏によるE・D・ホックの怪盗ニックものやサム・ホーソーンものとか。深町さんによる『回想』の巻末解説でも一抹の倦怠感らしきものが窺える。

ただし「ホイッスラーの母蒸発事件」は無茶苦茶おもしろい。この一篇だけでも読む価値あり。