マーク・ハッドン『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(早川書房)読了。
主人公クリストファー少年の一人称。途中、コナン・ドイル『バスカヴィル家の犬』のネタバレあり。古典だからといってネタバレが許されると思ってるのか!!
でも子供の頃に読んだきりなので実はネタバレがどうかさだかではない。クリストファー少年が真犯人を間違えて憶えてるのかもしれない。ましてそのネタバレが養護学校に通う自閉症の少年によるものであれば、一概に怒るわけにもいかないような気もしてくる。
冒頭に起こった犬の事件が後半になってどうでもいいような扱いになってくるのがやや残念。結局この犬の事件というのは、そうは書かれていないけれども世に言う「自分探し」というやつの、単なる足がかりの役割しか与えられていなかったのだろうかと思うと一抹の寂しさが残る。
面白かったのはクリストファー少年が再三にわたって「これは隠喩ではなく直喩だ」とこだわるところ。「モンティ・ホール問題」というのはこの小説を読んで初めて知る。少年のよくみる夢というのが、いまだに忘れがたい星新一の「殉教」という短篇のラストシーンに一脈通じるものがあって興味深かった。