2008年8月15日

忍法人名連鎖

『別冊文藝 山田風太郎』の中に唐沢なをき「唐沢直樹(14)、山田風太郎をヨム」という漫画が載っている。

唐沢少年には小説の登場人物に俳優やアニメキャラの顔をあてはめながら読むという癖があったそうで、その一例として『甲賀忍法帖』の

陽炎はなぜかルパン三世の峰不二子なのだ.(声はもちろん二階堂由紀子)

というキャスティングが挙げられている。(由紀子じゃなくて有希子だけど)

ここで「なぜか」の語は本来不要だ。「陽炎=峰不二子」という取合せは決して思いも寄らないものではなく、むしろ誰もが「さもありなん」と思うだろうからだ。

しかし「声はもちろん二階堂」というこだわりには「お、そうなのか」と注目せざるをえない。

なぜなら私は、実は不二子役の声優が、二階堂さんだったのは第1シリーズだけであり第2シリーズからは増山江威子さんに代わっていたということを大人になるまで知らなくて、ストーリーやキャラクター造形はいざ知らず、こと不二子の声に関しては子供時分は全く違和感なしに第1シリーズも第2シリーズも観ていたからなのである。

それには増山さんの声がキューティーハニーやらバカボンのママやらで慣れ親しんだものであったせいもあるだろうし、今なら確実に聞き分けられるにちがいない第1シリーズの不二子の声の翳りを帯びたアダルトさに対して当時はきわめて鈍感だったせいもあるだろう。

その違いを、唐沢直樹(14)は、リアルタイムで識別していたらしいのである。

さて、ウィキペディアによれば二階堂さんは今ではあの「クイズハンター」の柳生博夫人となられているそうだ。はて、柳生?

なんと、その柳生博についての記述の中には「剣豪として有名な柳生一族の末裔である」との一文があるではないか。風太郎忍法帖で言えば『柳生忍法帖』その他諸々の、あの柳生である。

甲賀の陽炎→(峰不二子)→(二階堂有希子)→(柳生博)→柳生一族、という摩訶不思議な連鎖。唐沢なをき、げに恐るべし。