山口雅也編『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』(角川文庫)読了。
ジェイムズ・パウエル「道化の町」目当てで買ったもの。ハヤカワ文庫のアンソロジーで「神の目」という短篇(目ではなく眼だったかも)を読んで以来の忘れじの作家。
道化師しか住んでいない町。警官もウェイトレスもピザの宅配員もみんなピエロ。単独で聞きこみに歩きまわる警察官を視点人物にしたハードボイルドっぽい作風は「神の目」とはだいぶ印象が異なり、はたして同じ作家なのだろうかと不安になったが、どこか遠いところを垣間見させてくれる読後感はまぎれもなくあのパウエル。
とても不思議な、底知れない作家だ。あとから気がついたのだがこの作品を表題作にした個人短篇集が同時期に出ている。必読。
巻末の出典一覧に「世界最強の仕立屋」という題名が含まれているが、目次にも本文にもなく誰の作品なのかわからない。順番としては「道化の町」の次に収録される予定だったようなので、もしかしたらパウエルの作品なのかもしれない。