のらりくらりとした戯作者ふうの筆運び。意識してのことなのかどうか、同じ忍者ものでも山田風太郎の忍法帖とはかなり印象が異なる。もっともその底に流れているものは両者で大きく隔たってはいないようにも思う。
ただし表紙や挿絵が現代マンガ風で、ヒロイン十三妹の容姿が幼すぎるのはやや興醒め。どうせなら新聞連載時の挿絵というのを入れてくれたほうがよかった。連載が朝日新聞で文庫化が読売系列の中公という組合せでは無理な相談なのだろうか。
片や、終始一貫してニヒルな剣豪といった雰囲気を漂わせている白玉堂だが、面と向かってこそないもののモノローグの中では一度ならず「十三妹ちゃん」呼ばわりしているあたり、ルパン三世のアニメで「峰不二子ちゃんはそれがしのガールフレンド」などとのたまう登場直後の石川五ェ門を思わせるものがあったりしてなかなか楽しい。